第9話:休んでもいいと思えたこと
前回のおさらい
前回(第8話)では、「不安があっても眠れる日が増えたこと」について綴りました。
眠れない夜に焦らず、ただ目を閉じて休むだけでもいい──
そんなふうに自分を許せるようになったことは、心にとって大きな回復の一歩でした。
今回はさらに、
**「休むこと自体を肯定できるようになった経験」**について、
私自身の体験をもとに、お話ししていきます。
「休んではいけない」と思い込んでいた日々
うつ状態になったとき、
私は何よりもまず、**「休むことへの罪悪感」**に苦しみました。
- 「みんな頑張っているのに、自分だけ休んでいいわけがない」
- 「何もしない自分なんて、存在する価値がない」
- 「怠け者だと思われたらどうしよう」
そんな思いが、頭の中をぐるぐると支配していました。
本当は心も体もボロボロで、
もう立っているのがやっとだったのに、
「休んだら負けだ」と自分を追い詰め続けていたのです。
結果、
無理に動こうとして、すぐにエネルギー切れを起こして、
自己嫌悪と絶望に沈む──
そんな悪循環を、何度も何度も繰り返していました。
「休んでもいい」と教えてくれた言葉
そんなとき、ふと手に取った本の中に、こんな一文がありました。
「休むことは、怠けることではない。
休むこともまた、前に進むための大切な行動だ。」
初めて読んだとき、
心に小さな波紋が広がったのを覚えています。
休むことは「後ろ向き」なことじゃない。
休むことは「進むために必要な準備」なんだ。
その言葉を、すぐには信じられませんでした。
でも、何度も何度も読み返していくうちに、
少しずつ、心の中に入り込んでいきました。
休む勇気を持った日
ある日、どうしても体が動かなかった日がありました。
これまでは無理にでも立ち上がろうとしていた私が、
その日は初めて、
「今日は休んでいい」と自分に許可を出しました。
- ベッドの中で、ただ天井を眺める
- ぼーっとしながら、ゆっくり呼吸する
- 誰にも連絡せず、ただ静かに過ごす
最初は罪悪感でいっぱいでした。
「こんなことでいいのか」と自分を責める声も消えなかった。
でも、
時間が経つにつれて、少しずつ、
心がふわっと軽くなっていくのを感じたんです。
何もしなくても、
ここにいるだけでいい。
今は、それだけで十分なんだ。
そう思えたとき、
胸の奥にあった苦しさが、少しだけ溶けた気がしました。
休むことを肯定できたら、世界が変わった
それから私は、意識して「休む」時間を取るようにしました。
- 疲れたら、無理せず横になる
- 予定を詰め込みすぎない
- 「休みたい」と感じたら、素直に休む
最初の頃は、まだ戸惑いもありました。
でも、少しずつ、少しずつ──
休んでも、自分は消えない。
休んでも、誰も怒らない。
休んだあとは、ちゃんとまた歩き出せる。
そんな当たり前のことに、
私はやっと気づくことができました。
そして何より、
休んだことで、
自分に優しくなれる時間が確実に増えたのです。
「休む」=「生きるための力」
うつを経験して心から思うのは、
休むことは、ぜんぜん悪いことじゃないということ。
むしろ、
生きるために必要な大切な力なんだということ。
疲れたら休む。
苦しくなったら立ち止まる。
また少し元気が出たら、歩き出す。
それでいい。
それで、ちゃんと生きていける。
今の私は、心からそう思っています。
もし今、休むことに罪悪感を感じている人がいるなら、
この言葉を届けたい。
「休んでいいよ。
あなたは、ちゃんと生きている。
それだけで、十分すごいことだから。」
次回予告
第10話:「小さな喜びを感じられる日が増えたこと」
ほんの些細なことでも「うれしい」と思えた瞬間。
生きる世界が少しだけ色づき始めた日々について、
次回は綴っていきます。